不眠症のおばちゃん

これは2017年当時の臨床記録です。

その日の午前中、新患の女性が来院されました。
主訴は「夜、眠れない」という深刻な不眠の訴え。
加えて、リウマチなどいくつかの症状もお持ちでした。

お話をうかがっていると、
この方はかつて温古堂で橋本敬三先生に
何度か診てもらったことがあるとのこと。

実際に身体に触れてみると、
「この方、本当に長い間、頑張ってこられたんだな」と、
こちらの手にまで伝わってくるような感覚がありました。

その瞬間、私は心の中でそっと
「いっぱい頑張ってきたんですね」と語りかけていました。

座った状態で膝を天井方向に上げる動診をしてみると、
左右ともに動かしづらい状態。
他の動きでは特に制限はなく、普通に動けていました。

直感的に、足の指にそっと触れてみると……
カチカチに固まっていました。

私はその足指に優しく手を添えながら、
「とてもいい身体ですね。でも、少し頑張りすぎてきたみたいですね」
そんな気持ちを込めて語りかけるように触れていました。

すると突然、クライアントさんの目から
涙がポロポロとこぼれはじめたのです。

「こんな身体が“いい身体”だなんて、言われたことなかったです……」

涙を流しながら、そうおっしゃいました。

その言葉を聞いたとき、こちらも胸が熱くなりました。
そして気がつくと、あれほど固まっていた足指が、
ふわっと柔らかくなっていたのです。

施術後には、ご自宅でもできる簡単なセルフケアとして、
「耳引っぱり(神門刺激)」や「快高圧操法」などをお伝えし、
クライアントさんは明るい表情で帰られていきました。

この日の出来事は、
「身体に触れること」「その人を認める言葉」が
どれだけ深く届くのかを、改めて教えてくれた出来事でした。

身体も心も、やさしく見つめていきたい――
そんな思いを強くした臨床のひとときでした。

今貴史 著

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