頭痛・吐き気・めまい
2022年の夏のこと。
頭痛・吐き気・めまいが1週間以上続いている
初診の患者さんが来院されました。
歩くのもやっとの状態で、顔色も優れず、
かなりツラそうな様子でした。
病院で検査を受けたものの、
明確な異常は見つからず、「ストレスが原因でしょう」
と診断されたとのこと。
しかし、その方は「本当にストレスだけなんでしょうか?」
と、不安な気持ちを抱えて来院されたのです。
早速、身体の触診を行ってみましたが、
目立ったコリや大きなバランスの崩れはありませんでした。
このようなケースでは、「鬱熱(うつねつ)」、
つまり身体の内側に熱がこもっている状態が
関係していることが多くあります。
そこで、氷を使った操体を試してみることにしました。
ただし、氷をただ当てるだけではなく、
事前に身体の「やりづらい動き(動診)」をチェックしてから行います。
今回チェックした動きは以下の通りでした:
左足首の背屈
左股関節の屈曲
左肩関節の外転
右肘の屈曲
いずれもスムーズに動かすことが難しくなっていました。
今先生に氷を用意していただき、気持ちの良いと感じるところに
当てていきました。
患者さんは、「先生、とても気持ちがいいです……」と、
ホッとした表情をされていました。
よほど熱がこもっていたのか、氷はあっという間に溶けていきます。
気持ちよさを味わいながら、再度動診を行ってみました。
すると驚いたことに、すべての動きが
スムーズにできるようになっていたのです。
それと同時に、頭痛も、めまいも、吐き気も
スッと引いて楽になりました!と喜んでくださいました。
施術後は明るい表情で、まるで別人のように
軽やかな足取りで帰って行かれたのを今でも覚えています。
あのときの体験は、あらためて「感覚に寄り添うこと」
「鬱熱を解くこと」の大切さを感じた臨床でした。
今貴史 著