腱鞘炎

               今 昭宏 著

次の患者さんは、今日が初めてという、かわいらしい昔ギャルです。

昔ギャルは、イスに腰掛けて
「2週間前に、右手の親指のつけ根が痛くて診てもらったら、腱鞘炎といわれ、そこに注射してもらったら、今度は親指がしびれてきたんでがすぅ。先生の話では、注射の針が親指の神経に当だったためにしびれるげど、時間が経つとだんだんに直ってくんだって言ってだ」。

とのこと。

「えっ、なにそれー」と思ったのですが、
私は冷静に「そうですかぁ、それで、痛みはなくなったんですか?」

「いいえ、まーだ痛いでがすぅ」

「あらまぁ」

「ところで、気持ちのいいようにすると早く直るって知ってました? 」

「はぁ? 」

「そんなこと急に言われたってわかんないよねぇ、まあ、やってみましょう」
「そこのベットに腰掛けてみてください」

私は昔ギヤルの背中をささーっと触診してみました。
背骨と肩甲骨の間がゴリゴリしていて、押すと「いでででー」となりました。

「押された後の感じはどうですか? いやですか?、イイ感じですか? 。」
「なんだが、肩が軽ぐなるねぇ」

「けっこう、凝っていて、押されると痛いでしょう、ほら」と私は、
こりこりぐりぐりと少し押さえて、動いてもらいました。

それから、腱鞘炎の右手に行って見ました。赤くなって痛そうでした。

ここから、かわの操体が始まります。

私は左手で、昔ギャルの手首を支え、右手の2、3指で手首と親指の間の
皮膚(かわ)を肩の方にほんの少しずらしました。
「どうですか、気持ちいいですか? 」
「なんだが、気持ちいいねぇ」といいながら、昔ギャルは手を天井の方に上げてきました。

頭より高く上げたあたりでピタリと手が止まりました。

「これ、自分で上げましたか? 」

私は、なんとなく答えはわかっていたのですが、聞いてみました。

「何もしてねぇよ、せんせが上げてくれたんでしょ」

「ひとりでに上がるんですよ手がね、ここのかわをこうしただけで」
「ほらほら、せんせは上げてないでしょう」。

「あれーっ、なんか変な感じだねぇ、手が勝手に上がってしまうなぁ」

「で、感じはどうですか? イイ感じですか? 」

「んだねぇ、なんか気持ぢはいいねぇ」

そのまましばらく上げたままでいると、勝手に脱力が始まり
元の位置までゆっくりともどりました。

そばで見ていた保健婦さんも、びっくりの顔で見ていました。
「おもしろいでしょう、からだって」と私がいいました。
しかし、一番おもしろがっているのは私でした。

これで、まだ完全ではありませんが、シビレも大部良くなったとの
ことでした。

自分でもやれるように、少し教えました。が・・・・。
(とってもヘタクソで順延となりました)

「まあとにかく、痛いことはできるだけしないようにして、
また来月いらしてみたらどうでしょう、それまで直っている
といいけどね・・・ではおだいじにー」。

ひとつも操法を教えないで帰してしまいました。(^^;)
ま、いっかぁ。
痛いことをしないだけでも治る場合がたくさんあるから・・。