膝痛

             今 昭宏 著

昨日、右の膝が痛くて伸ばせないというおばあちゃんが、
足をひきずって、よっこらよっこらひとりで歩いてきました。

にっこり笑顔がおかめに似ているので、「おかめばあちゃん」
と名づけました。

おかめばあちゃんは以前にも何度か来たことがあって、
そのときもやっぱり右膝の痛みで正座ができないとのことでした。
でも今回は、正座はできるけど、膝が伸ばせなくって歩くと
痛いということでした。

「前の時は、右膝が痛かったのに、せんせが押さえたら、
左の膝のウラが痛くなっていて、そこが直ったらこっちの膝が
治ったんですぅ」と、おかめばあちゃんはいいました。

カルテを見ると、やっぱり左膝ウラにバツ印かついていて、
左のつま先上げと、ひざたおし左へ、うつぶせの右足伸ばしを
やったことになっていました。

「どれどれ」と私は仰向けになって膝を立てているおかめ
ばあちゃんの膝ウラを調べてみました。
ぐりぐりして「あらららっ、これ痛いでしょう、やっぱり左だねぇ」

「あらーっ、やっばり左だぁ、あいたたたっ」

私は、「はい、ではこの左のつま先を上げてみてぇ」といいながら、
膝ウラを調べてみました。ごりごりしていて変化なしでした。

「これじゃあ消えないねぇ」。「あいたたたっ、まだ痛いですぅ」。
「それでは右肩上げてみてぇ、今度は左、消えないねぇ」

「首ねじってみてぇ、おっ、左にねじるとなくなるねぇ、
ちょっと右にねじってみてぇ、これ、出てくるねぇ、もう一回左」
といって、くにゃくにゃになった膝ウラをクリクリ押さえ、
からだは、首を左にねじりたがっていることを確認している私でした。

おかめばあちゃんは、「首を動かして膝痛くなくなるんだぁ」と
ひょっとこのような顔をしてびっくりしていました。